西武新宿線「上石神井駅」駅・街の歴史編

毎回、都心のさまざまな「駅」に焦点を当て、その周辺エリアの住みやすさや街の便利な情報をお届けしている当「タウン情報」ですが、今回はガラッと趣向を変えて、以前好評だった「おかわり企画」をお送りいたします。

その企画とは、今までに登場したエリアをさらに徹底解析し、アクセス環境や住まい環境、駅・街の歴史などの項目別に特集しちゃおう！というもの。

そして登場するのは、当タウン情報において安定した登場回数を誇る「西武新宿線」より、人気の高い「上石神井駅」の「駅・街の歴史」を中心にお送りします。

では、さっそく「上石神井駅の歩み」からスタートです！

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「上石神井駅」の歩み

「駅・街の歴史」という形では、以前の回でもご紹介していますが、今回はさらに「上石神井駅」が歩んできた歴史を掘り下げてご紹介していきましょう。

この「上石神井駅」が属している「西武新宿線」の前身は、以前の回でもお伝えした通り「川越鉄道」という、現代の鉄道ファンにはあまり知られていない鉄道会社の路線「村山線」でした。

当時、この「川越鉄道」は、一民間鉄道会社に過ぎなかった「甲武鉄道（現JR「中央本線」のルーツ）」の支線をサポートするための「関連会社」という名目で設立されたのですが、その後「甲武鉄道」が1906年（明治39年）にまさかの「国有化」を果たしてしまったことで孤立。

最終的には独立した形で「川越鉄道」で有り続けるしかない、という少々不憫な鉄道会社・路線だったのです。（この状況を覆すため、さまざまな「電力会社」との合併や吸収などを経て、旧「西武鉄道」へと生まれ変わります）

そのためか、この「上石神井駅」自体もその歴史は古く、1927年（昭和2年）という時期に前述の「村山線」としてデビューしています。（おまけに当時の鉄道路線では新しい「生まれながらの電化路線」でありました）

この当時の都心の鉄道事情は、言うならば「郊外から都心への輸送競争の激化のさなかであった」という所で、この「村山線」もデビュー直後からフル回転だったのですが、この背景には、多くの都心居住者が郊外へ住まいを移していったきっかけとして、1923年（大正12年）の「関東大震災」がありました。

さらに、この当時は前述した「甲武鉄道」をルーツに持つ現JR「中央本線」と、現在の「西武池袋線」のルーツとなる「武蔵野鉄道武蔵野線」が「川越鉄道」の強力なライバルとして立ちふさがっており、中でも「所沢駅」を共用する立場にあった「武蔵野鉄道」とは「犬猿の仲」とも称されるほどの険悪なムードであったのだそう。

しかし、太平洋戦争が集結した後には、この「宿命のライバル」同士がまさかの合併を迎え、現在の「西武鉄道（※前述の「旧西武鉄道」とは異なる）」につながっていったのですから驚きですね。

このように、現在の「西武鉄道」と各路線は、昭和初期辺りに「大きく動いた」時期があり、それぞれにこの紙面では語り尽くせないほどのエピソードがありますので、気になった方はご自身でも色々調べてみると良いでしょうね。

というわけで、この「西武新宿線」と「上石神井駅」については、今後また別角度からお話することもありますので、今回は一旦ここまでにしておきましょう。

石神井川

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莫大な収入が期待できる「石神井郷」　～駅周辺の街の歴史～

さて、今回の「上石神井」も含め、この辺りのエリアを総合する名称となっている「石神井」に関してですが、その仰々しいほどの名前をはじめ、いろいろな逸話が多くあります。

ここではそんなエピソードをご紹介していきましょう。

そもそもこの地は、古くから「石神井郷」と呼ばれてきました。

この「郷」という区分が、「国（ここでは「日本国」というような「国家」ではなく、国内における「領土区分」としての意味合い）」や「領地」を意味しているのは皆さんもお分かりでしょう。

もちろん、本来の「郷」の意味は「古代の行政区域」における「一単位」であり、厳密に言うと「五十戸＝一郷」とカウントされていたのですが、後には「いくつかの村が集まった地域」という意味に変化していった、とされています。

しかし、最も大きな意味合いとしては「領主がその地に住まう農民などから年貢を取り立てる形で収入を得る事ができる農地」という部分でしょう。

ですので、このセクションの「莫大な収入」という部分に興味を持った方は多かったと思いますが、実際のその恩恵を一身に受けられるのは「領主」とごく限られた少数の人々のみであったと考えられます。

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後に「郡名」となる領主「豊島氏」　～駅周辺の街の歴史②～

実は、この「石神井」を含む広大なエリアは、長らく「北豊島郡」として区分されていました。

しかも、この「豊島郡」という区分は、はるか昔の1300年代後半である「南北朝」時代にこの地を統治していた「豊島氏」に由来して名付けられています。

ただ、この「豊島氏」による支配も長くは続かず、1477年（文明9年）には当時の「石神井城」が、江戸城築城で知られる「太田道灌」の攻撃を受け落城、「上杉氏」「後北条氏」の庇護の元「太田氏」の所領となってしまいます。

とはいえ、おいそれと「北豊島郡」から「北大田郡」と郡名を変更するわけにもいかず、郡名としてはそのまま「豊島」が用いられ続けました。

さらに時代が下ってからは、ごぞんじ「江戸幕府の立役者」である「徳川氏」の所領となり、幕府成立後は「幕府直轄領」としても運用されています。

このことからも分かる通り、このエリアは「群雄がその支配権を奪い合うほど、優良な収入・恩恵が見込める土地」であったのでしょうね。

（明治維新後には「東京府」の所轄地域にもなっています）

この近辺が「優良な農地」であったことに、もはや疑いの余地もありませんが、明治に入ってからは、徐々に近代化の波が押し寄せてくることとなり、1889年（明治22年）には有名な「明治の大合併」により「上石神井村」から「石神井村（後に石神井町）」へ変更、駅名にもある「上石神井」という地名は「大字」の地位にまで下がっていくこととなります。

こうしてみると、現在の「豊島区」の由来である「豊島氏」が、主としてこの地を治めていたのははるか昔のことですが、地名として現在までその名を残してきたことを考えると、豊島市が支配したのは余程いいタイミングの時だったのではないでしょうか？